【畑から、都農を知る Vol.2】山村諭美さん ― 家族で紡ぐ、かぼちゃづくりの物語
おばあ様の代から続く農園で、かぼちゃ、さつまいも、千切り大根(切り干し大根)を栽培している山村諭美(さとみ)さん。7月8日、強い日差しが照りつける都農町内の畑を訪ねると、夫の修一さん、父の吉田茂さんと一緒に作業に励んでいらっしゃいました。


■息の合った連携プレー
この日収穫していたのは、JAブランドの洋種かぼちゃ「鈴マロン」。「尾鈴地区」の「鈴」をとって名付けられたそうです。ホクホクとした食感と強い甘みが特徴で、厳しい品質検査を通過すると、主に関東地方で販売されます。
畑では、諭美さんと修一さんが蔓をかき分けながら完熟したかぼちゃの果梗(果実と枝をつなぐ柄の部分)を切って収穫。その実を茂さんが受け取り、ヘタをスプーンで丁寧に整えてかごに収める——。
その様子は、まさに家族ならではの見事な連携プレー。テンポよく、無駄のない動きに圧倒されました!
収穫されたかぼちゃは、風通しの良い場所で3日から1週間ほど保管し、追熟させてから出荷されます。ヘタがしっかり乾かないまま出荷してしまうと、カビが生えたり雑菌が侵入したりして品質が下がってしまうため、ヘタの処理と乾燥も欠かせない大切なひと手間です。


■手間を惜しまない栽培管理
今回収穫したかぼちゃは、3月上旬に苗を植え、約4か月かけて育てられました。その間に行う管理作業は多岐にわたります。
地温を上昇させ、苗を守る「トンネル設置」
花の開花と着果を促す「整枝(せいし)」
蔓の成長を助け、実を保護する「藁敷き」や「玉直し(実の下にマットを敷いて変色を防ぐ)」
さらに、「二本仕立て」と呼ばれる方法で一株から2本の蔓のみを伸ばし、果実をつける位置も15節目に限定するなど、品質向上のために細かな工夫が施されています。


■実のなり方と収穫時期
畑には、黄色い花がちらほらと咲いていました。その根元には、ぷくっと丸い緑色の膨らみが。これは雌花の下にできる部分で、受粉すると大きくなっていき、やがて立派なかぼちゃになります。
収穫時期の見極めには、切り割りによる熟度検査を行いますが、「花が咲いてからの日数や見た目でも判断できます」と諭美さん。
「目安は、開花から55日以上。見た目では、軸の部分が青からコルクのような線状に変わると完熟のサインです」と諭美さんは教えてくれました。


■農家としての歩みとやりがい
もともとご夫妻は会社員でしたが、約25年前に修一さんの希望で農業の道へ。諭美さんの祖母と父・茂さんがたばこ栽培を行っていた農園を引き継ぎ、農家としての生活が始まりました。
現在は唐芋(さつまいも)を中心に、お義母様のすすめで約7〜8年前にかぼちゃの栽培も始めたそうです。
休みが少ない中、5時や5時半から作業をし、家族の食事づくりや買い物、家事もこなす日々。
「時々、自分が何をやっているのかわからなくなることもあります(笑)」と話しながらも、日々の営みに真摯に向き合っています。
「今年は熟れが遅くて苦労しました」と語るのは、天候の影響。春先の低温と長雨でかぼちゃの熟れが遅れ、受粉を助けるミツバチがなかなか飛ばず、初めて人工授粉にも挑戦。
また、近年は日差しが強くなり、実が日焼けすることもあるため、新聞紙で包んで実を守るなど、新しい工夫も取り入れています。
それでも——
「きれいな実に育ったときはすっごく嬉しい!」と笑顔で話してくれた諭美さん。
蔓が交差すると実がなりづらく、育ったとしても形が崩れてしまうなど、繊細な調整が必要なかぼちゃ栽培。だからこそ、ひとつひとつ手をかけた実りには、かけがえのない喜びがあるのだと感じました。
地元の風土に根差し、季節の移ろいと向き合いながら丁寧に作物を育てる農家の皆さんの姿には、都農町の豊かさと、未来へつながる力強さが詰まっています。
今後も「畑から、都農を知る」シリーズを通して、食の背景にある人や営みに光を当てていきます。


都農マリアージュの代名詞とも言える書籍『みんなが喜ぶワインのおかず』(2024年刊)には、「かぼちゃとたくあんとクリームチーズのサラダ」のレシピを掲載しています。意外な組み合わせですが、お酒と一緒に食べたくなる大人の味わいです。ぜひご覧ください。


