【畑から、都農を知る Vol.3】 生姜農家・脇田剛さん

 書籍『みんなが喜ぶワインのおかず』には、地元食材を使った52種類のレシピが掲載されています。そのうち、実に12品に登場するのが「生姜」です。
 今回の【畑から、都農を知る】シリーズ第3弾では、その生姜栽培を中心に取り組む農家・脇田剛さんをご紹介します。

■尾鈴で育つ、香り高い生姜

剛さんは都農町在住で、ご実家のある川南町で、父・健治さん、弟の豊さん、奥さまの紗巴さんとともに農業を営んでいます。主に露地栽培での生姜を手掛け、スイートコーンも生産しています。

もともと別の作物を育てていた健治さんが、約20年前に生姜栽培をスタート。ここ数年は、剛さんが中心となり、生産の規模を本格的に拡大しています。

栽培しているのは、大生姜という品種。玉が大きく、しっかりとした辛みと香りが特徴です。

「脇田さんの生姜は、他のものと比べて肉の臭みの消え方がまったく違う。加工しても香りが強く残るんです。」
——「道の駅つの」のスタッフの方からも、そんな高い評価を受けています。

■半年をかけてじっくりと育つ

脇田農園の生姜栽培は、2〜3月の土づくりから始まります。4月に植え付け、5月には発芽。土寄せや敷き藁(わら)を施し、7月には台風対策としてタイミングを見ながらネットを設置。そして、11月頭から収穫となります。

植え付けから収穫まで、なんと半年以上。実際にお話を伺う中で、「生姜がこれほど時間をかけてじっくり育つものなのか」と、驚かされました。

脇田農園の生姜の90%は水分、10%は繊維質でできています。
この「10%」という繊維の割合こそが、品質の高さを示すポイント。一般的な家庭菜園で作る生姜の繊維質は、5%程度にとどまることが多いそうです。

■観察と管理で品質を守る

「良い生姜を作るには、いかに観察するか。徹底した観察と管理が必要です。」と剛さん。生姜は非常に繊細で、病気や腐敗のリスクが高いため、細やかな配慮が求められます。 畝を短く区切って病気の広がりを防ぎ、雨の日には畑に入らないようにするなど、日々の行動にも注意が払われています。取材時にも「菌を持ち込まないように」と、畑に入る際には靴を履き替えるほどの徹底ぶりでした。

栽培において特に重要なのが「水分管理」と「種生姜の品質」です。

【水分管理】
生姜は乾燥を嫌いますが、水分が多すぎても病気を引き起こすという難しさがあります。脇田農園では、保水性の高い土壌づくりや敷き藁による乾燥防止などを通して、バランスの取れた環境を整えています。水やりのタイミングも、葉の状態をよく観察しながら慎重に判断しているとのこと。

【種生姜の管理】
生姜の品質を大きく左右するのが「種生姜」。過去に、良質と思って使用した種が、梅雨の時期に病気になったこともあるそうです。種生姜は、見た目だけでは病気になっているかどうかわからない。
そこで、自家製の種生姜づくりに挑戦し、植えて食用生姜を育てたら病気にならず、安定した栽培につながりました。

また、4年前に導入した冷蔵倉庫によって、一定の温度で貯蔵できるようになり、品質保持にも大きく貢献しています。

■高知で学び、宮崎で育てる

剛さんには、全国一の生姜産地である高知県土佐市に「師匠」と呼べる存在がいます。
「8年ぐらい前、近所の方の紹介で高知の師匠と出会い、そこから2年間、毎月通って生姜栽培を一からすべて学びました」

土佐の粘土質で乾きにくい土壌と、宮崎の火山灰土壌では性質が大きく異なり、最初はそのまま高知のやり方を試しても上手くいかなかったそうです。

しかし、肥料や植え方、水やりなどを毎年試行錯誤し、工夫を重ねて、徐々に「この土地に合った方法」を見つけ出してきたそうです。 「評価されるまでに4〜5年かかりました。でも、まだまだ高知の生姜にはかないません」と謙虚に語る姿から、飽くなき向上心が伝わってきます。

■「質の良い生姜を作る」という誇り

「このあたりで生姜を育てるのは難しい。でもだからこそ、うまく育ったときは嬉しいし、やりがいがある。」
剛さんの言葉には、品質への誇りと農業への情熱が込められていました。

今年は、食用生姜から種生姜の生産へと主軸を移しつつ、新たな加工品開発にも力を注いでいます。

「道の駅つの」では、100%自家製生姜を使用した、
▶︎『生姜農家がつくった生姜ドレッシング』
▶︎『生姜農家がつくった生姜焼きのタレ』
が販売中。今後の新商品にも期待が高まります!

都農町やその周辺では、生姜をはじめとした食材づくりに真摯に向き合う生産者の姿が数多く見られます。私たちは、そうしたひとつひとつの営みに、町の豊かさと未来への可能性を感じずにはいられません。

今後も「畑から、都農を知る」シリーズを通して、食材の背景にある人や物語に光を当てていきます。

書籍『みんなが喜ぶワインのおかず』(2024年刊)では、生姜を使ったレシピを多数ご紹介しています。今の時期のおすすめは、「豚肉となすの梅生姜焼き」、「とうもろこしと新生姜の炊き込みご飯」。ぜひご家庭でも、ワインとのマリアージュをお楽しみください。

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